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初稽古を終えて 会員S.Y

34歳から武道をはじめて16年結構頑張って稽古にいってました。 10年位たってからそこそこ自信もついてきたころ、ふっと気がつきました。
毎年大学生が入門してきて、それが3年生くらいになると立場逆転。いつもいつも気がつくと、いつの間にか抜かれてしまって・・・
前にテレビで具志堅さんがお笑いのナイナイのちっちゃいほうとボクシングの試合をして途中から息切れで結局倒せないどころか逆に押されているのを見て、本当にショックでした。
そんな中先輩に合気道の佐川さんの記事を見せてもらって本物の先生に習いたいと思って、まったりと時間が過ぎていたところ、古い秘伝の天野先生の記事を見つけて、絶対本物だ~って思って思わず入門依頼しました。
昔から松田隆智さんの漫画等で、中国拳法はただ中腰で立っているだけで、達人になれるというのは、わかっていましたが、半信半疑で続きませんでした。
太気拳に入門してみて、立禅・這い・練りのみなので、ただ勝手にまねるだけだと思っていましたが、うまく出来なくて悩んでいるときや、気つかずに腰が伸びているときに、タイミングよく、また理論的に指導していただけるので、理を知った上で稽古できて、本当にびっくりしています。
最初に天野先生に「100mよーいドン!で競争したら、若いもんには勝てないけど、たかだか4~50cmの間合いを詰めるだけだったら、老若ぜんぜん関係ない。まだまだ強くなるよ。”っていう言葉にすごく救われた気がしました。
毎回稽古楽しみにしています。 (やっと翌日の筋肉痛も開放されてきました。が稽古の最後のほうは、太ももがパンパンで、もう立禅が10秒くらいしか出来ません。かなしイ~ツイシュまでにもっと脚の筋肉を強化スプリングにしなくては)
覚えの悪い弟子(もう決めてます)ですが、今50歳。今本物を稽古しなければ、もう人生終わりです。 そう思うと、思わず稽古に力が入ってしまいます。 この先まだまだ宜しくお願いいたします。

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平成15年冬交流会感想 会員N 2003/12/25

 はじめまして、今年4月に、太気会に入会したNです。私なりの今回の交流会へ向けた対策と当日の感想を書かせて頂きます。
 まず、私なりに交流会へ向けてテーマを設けました。「組み手の激しい動きの中で基本を崩さずにまもる」「集中力の持続」「闘争心の持続」です。この、3つのテーマを何とかクリアできないかと、今年8月の太気会夏合宿の組み手ビデオを見て自分の動きを検討してみました。まず、目に付いたのは、膝が硬く移動がスムーズにいってないことでした。つまり、基本ができてないという事です。少々悩みながら練習していたある日、先生から面白い話をしていただきました。膝にかかる荷重の分散の原理を東京タワーを例にとって、説明してくださったのです。タワーを横から見ると、全体が内側に沿った形をしており上下方向にかかる荷重は、全部真下へかかるのではなく横方向にも分散され非常に安定した状態でいる。と、いうものでした。そのお話を聞いた後、立禅のやり方を変えて以前より膝を内側へギュ、と入れるようにしました。なんとなく膝関節が楽になったと思ったころ、何気なくシャドーを行ったときに大きな変化を感じました。以前に比べ移動がずっと楽に速く出来るようになったのです。先生が以前より言われていた、「歩くように殴る、流れる様に移動する」の意味が少し分かった気がしました。その後、交流会の少し前に先生が組み手の相手をしてくださった時、明らかに以前の自分の動きより良くなったのを確認出来ました。その反面、先生の動きがより速く感じられたのです。ビデオを撮っていた訳ではないので感じたことを申しますと、先生の動きは直線ではなく曲線の動き、動物の様な動き、中でも肉食獣の動き(ヒョウやトラが獲物を捕らえる時に見せる手足が激しく動いているにもかかわらず、頭の位置が安定し獲物の首を噛む一瞬前に見せる複合フェイントの様な動き)の様に感じられました。私は以前フルコン空手をやっていたせいか太気会に入会した頃の組み手の動きは直線的、動物にたとえると牛や猪の動きでした。牛や猪は突進力はありますが,トラにはかないません。
 交流会へ向け私の最大の課題は、基本であり、なかでも移動に関することでした。
 いよいよ12.14交流会の日がやってきました。天気は素晴らしく晴れ、気分は爽快(と、言いたいところですが、実はキンチョー)確か当日は私が一番乗りでした。徐々に、関係者が集まってきて40人弱くらいになり、自然と立禅などの練習を全員が始めていきました。少し遅れて、気功会の島田先生が到着されました。練習している太気会、気功会の方たちを見て回り時にはアドバイスをしてらっしゃいました。初めて目の前にする島田先生の迫力が、以前本や雑誌などで読んだ伝説的な話以上のものを感じました。しばらくして先生の「それでは始めます。」の号令で全員が円を作るように集まり、独特のフィールドが出来上がりました。最初に先生と島田先生のお話を拝聴した後、先生方、生徒の方々、雑誌社の方々が見守る円陣の中央で組み手が開始されました。次々と激しい組み手が行われる様子を見守りながら、いつ自分が指名されるかその不安感が徐々に大きくなっていったのも事実です。
 自分のテーマ「基本を守る」を極力実行するため、また「集中力の持続」「闘争心の持続」に気持ちを切り替えるため、以前練習で行った先生やO先輩との組み手の時のことを思い出してみました。先生に凹凹にされ、先輩のOさんに潰された(もちろん手加減してくださっていますが)時の事を思い出したのです。そうすると不思議なもので、気持ち的には少し落ち着いてきたのです。多少、気が楽になった余裕をすべて組み手の中で、基本への忠実さを守る努力にあてようと思いました。いよいよ、自分が指名され立ち会ってみると相手の方の突進力が非常に強い為、「これは、あまりお付き合いしないほうがよいな。」と判断しこちらから突進するのはやめ、出来るだけ膝を柔らかくしなるべくスムーズな移動をする様に努力しました。本当にそう出来ていたかはわかりません。後でビデオを見てみます。多分出来てないので見るのが怖いです。2人目の立会いの相手は、身長が高くとても懐が深く感じられました。その中に無理に飛び込もうとして、やや力仕事になってしまったと思いました。この時は膝が硬く、体が硬直して動きがあまりよくなかった様に記憶しています。自分の組み手が終わり他の方々の組み手を見学したことも大変勉強になりました。特に、R先輩と気功会のMさん、気功会の方々とI先輩の組み手の迫力とレベルの高さに圧倒されました。
 無事全員の組み手が終わり、島田先生の経営なさっている中華料理店「青山一品」にて忘年会が開かれました。組み手の後という事もあり、料理とお酒のおいしさは格別でした。お酒を飲みながら今日の自分の組み手を振り返ってみて「自分は以前より上手くなったんじゃないかな。」という思いと「他から見てちゃんとやってたのかな?」と言う思いが同時に出てきました。何となくウジウジしていると隣に座っていらっしゃったR先輩に「だんだん、形になってきたな!」と言っていただき急にうれしくなりました。気分が高揚した私は酒の力も手伝ってグラスを片手に持ち、島田先生の座ってらしゃる席の近くへ移動しいろいろなお話を聞かせていただきました。一番印象に残っているのは、「ただ前に出るのではなく、こう動く!動物は皆こうしてるんだ。」と身振りを交えて説明してくださった時のことです。「あ、これは先生の動きと似ているな」と気付きました。太気拳を学び本当に強くなった人たちは、一種独特の動きや感性を共有しているのではと、感じました。また、島田先生は「もっと立禅しなさい。基本をもっとやった方が良い。」ともおっしゃってくださいました。その強さ故、人から伝説を語られるほどの島田先生に直接お会いできご指導していただいた事も、この日の大きな収穫でした。H15.12.4日曜日は私にとって最高の日でした。今後の交流会、また合宿で「最高」と言えるよう、練習を続けていきたいと思っています。

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太氣の初練習 会員Y 2003/02/19

 半月ぐらい前の夜、日課のジョギングをする為に玉縄児童公園に向いました。すると静まり返った公園の暗闇の中に、怪しくうごめく複数の影を見ました。中心に立ち尽す大きい影、その周りを向い合いながらうごめく影また影。「これは、武術の極秘練習だ。」直感した私は、急きょ予定を変え周囲をランニングしながら、公園内の様子をうかがいました。武術マニアな私は、推手のような影と立禅のような影を見て「これは太極拳か大氣拳ではないか」と思考を廻らせました。「こんな近くで夜な夜な猛者達が秘密特訓をしているなんて…」という驚きと共に「近くで見たい」そして「仲間にくわえて欲しい」という抑えられない感情が沸いて来ました。

 しかし、もし秘密特訓だったら…話しかけた瞬間に袋叩きにされるかもしれない。もしかして勢いで入門したら、自分の求めるモノと全然違うモノかもしれない。
 モンモンとしながら公園の周りをグルグルと回り、結局声をかけることが出来ず家に帰りました。その後仕事の忙しさもあり、約半月が過ぎました。

 そんなある日、截拳道経験者の知り合いと格闘談議に花を咲かせていた時、ふと彼が「そういえば玉縄で大氣拳の天野さんらしき人とすれ違った。あれは間違いなく天野さんだ。」と言いました。

 「あっ!」

 自分の中で線と点がつながりました。あれは、あの公園の影は、やはり大氣拳だったんだ!しかも大氣拳を代表する高名な先生だったんだ。

 次の日の仕事中、何か間接的にアポをとる方法はないかと思いインターネットで検索し、大氣会のホームページを発見!練習場所も公開されている。
 「秘密練習でもなんでもなかったんだ。」
 勝手な想像を膨らませていた自分を失笑しながらも、簡単に見付かったことに驚き、そしてその驚きの勢いですぐメールで問い合せをしました。次の日、天野先生から直接返信を頂き、「温かい服装で来るように」と見学のお許しを頂きました。

 その日の鎌倉はとても寒く、暗い夜道を吐く息を凍らせながら玉縄公園に向いました。すでに先生はいらっしゃっていて、柔軟体操をされていました。

 「天野先生ですよね」と声をかけ向い合い挨拶をしました。身長178cm体重88kgの自分よりひとまわり大きい。「寒いけど、とりあえず見てってよ。」笑顔でとても気さくに話される先生に、少し戸惑う私。
 先生は広い公園の中心にたたずみ、立禅・ゆり・這いと行ってゆく。動きはだんだんと速くなり、その動作の速さ、瞬発力に驚く私。

 1時間近く、先生の動きを目で追っていると、不意に先生が振り向き、私の方に歩いてきました。「なんだろう。」と思ったところで先生が私に何か問いかけました。良く聞き取れなかった私が緊張を笑ってごまかすと、少し離れて行き、公園内の唯一外灯の明りが照らす場所で立止まり私を手招きしました。

 「構えて」
 「えっ」
 「構えて見な。」
 おもむろに構える私。
 「攻撃して来てみな」
 あっけに取られる私に先生は
 「なんでもいいから早く。」
 言われるまま前蹴りを出す。
 「そんなゆっくりな蹴りじゃ反応できないよ」
 続けざまにジャブを出す。すると先生は私の視界の左斜め下に瞬間移動し、直後私の視界に縦拳が飛び込んで来た。

 「もう1度」
 今度はストレートを放つ。すると今度は右下に顔がずれたと同時に、また縦拳が私の視界をふさいた。
 「こういう動きをする為に、さっきの遅い動作や練習があるんだよ。」

 その後、先生はご自分の武術論をどこの馬の骨かも解らない私に熱く語って下さり、「是非、教えて下さい。お願いします。」と言う私に「こちらこそ」と答えながら笑う先生。その飾らず気さくな笑顔を見て、すっかりファンになってしまった私でした。
 その後、立禅を教わり、家に帰ったのは時計の針が9時40分を少し回った後でした。

 次の週の火曜日、19:00過ぎに桜木町のガード下に行くとすでに先生は立禅をされていました。
 準備体操を終え、前日教えて頂いた立禅を始めると、要所に進言を頂きました。

 「足を肩幅に開き、お尻で後に少し持たれかかるように腰を落として」
 「あしの間に丸木をそっと挟んで落とさないようにして」
 「背中は張らないで、お腹を少しへっこめるように立つ」
 「アゴの下に支えがあって、全身を支えるように立つ」
 「下半身が下に引っ張られる様にイメージして」
 「手を前にかざして、肩を落として」
 「そうしたら、少し前後に揺れて見よう」
 「後に行くときは、腰を落としながら、かかとが地中に沈んでいくように」
 「目線先の目標と後訪頭部がゴムチューブで結ばれていて、それをゆっくり引っ張るのだけれども倒れようとする体を支えてくれる。」
 「そのゴムが戻ろうとする力で前に傾く」
 「頭の上に天井があり、ゆっくりそれを押し上げ突き破るイメージ」
 「カカトが抜けて、指先に体重が移って行く。しかし、かかとは地面から離れまいとする」
 「その離れまいとする反動でまた後ろに傾くぞ」
 「そしたら今度は、かざしてある手と手の指の間にゴムがついていて、それを引き伸ばして見よう」
 「そして腰まで水面に浸かっていて、後ろに下がるとお腹の中心に水が流れ込んでくるように」
 「足の指は、地面を掴み、地面から離れまいとする。その力を意識しながら前に傾く」
 「前に行くときに脱力する様に」

 一言ずつ、そして体が覚えやすいタイミングで言葉が投げかけられるので、とてもスムーズに体が行動を起こします。
 今まで、体に初めての体験をさせると必ず違和感を覚えたのですが、先生の立禅は、とても素直に体がが受け入れます。こんな体験は生まれてはじめてです。(小中高校の勉強でもなかったし、10年やった空手でも、剣道でも無かった)

 立禅で感じた事は、パチンコ(玉をゴムで飛ばす玩具)でした。パチンコの玉を斜め下に「ググッ」っと引っ張り、斜め上に「フッ」っと放つイメージを感じました。
 地面を足の指で掴もうとしたのですが、靴底のアーチが邪魔をして上手行かず、靴を脱ごうかと真剣に考えました。

 「前に机があって、その上に腕を置いてごらん。」
 「その机を上から抑えつけるようにして」
 「そうしたら、後に倒れながら、止まる時に腕を引く。前に倒れて止まる時に腕を前に出す」
 「腕を引くことで後ろに傾く体が止まり、出す動作で前に出る体が止まる。」
 「抑えつけながら、ゆっくりと」
 「肘で机ごと引っ張り込むように、前に出すときは、机を押し出す様に」

 「今度は、手のひらを内側に開いて、手首で相手の手首を引っ掛けるように引いてくる。前に出すときは、相手の胸に指を指し込むように出す。引くときは、心臓を掴み出す様に」
 「引くときは広げながら、前に出すよきは、指先が集まって行く様に」

 立禅を過ぎたあたりから、とにかく先生の教えを忘れまいとすることで精一杯な私。

 「前足を前に出して、同じ動作をしてみな」
 「ほとんど後ろ足に体重をかける。後に行く時に骨盤を引き上げる様に。前に行く時、前足の骨盤を引き上げる様に。」
 「前の膝は、動かさない様にして、前に出るとき内側に力を入れて、後ろ足が引き付かれて行くように。」

 先生は私の前に立ち「思いっきり俺を押してみな」と仰っしゃった。
 私は、先生の胸に手を置き、力いっぱい押した。しかし、先生はビクともしない。
 「骨盤の上下の力を使うんだよ。」
 といいながら、先生は壁の前で私に踏ん張る様に言った。空手でいうところの前屈立ちに構えると、先生は私の胸に手をかざした。
 次の瞬間「フッ」先生の短い息の音とともに、私は後方に吹っ飛び、両足が宙に浮いた状態で、後のアスファルトに打ちつけられた。その打ち付けられた勢いで、また先生の目の前に立ち戻った。
 「全然違うだろ」
 間違い無く、宙に浮いた。しかも後に壁が無かったら、5メートルは吹っ飛んでいたか・・・・

 「じゃあ這いをやってみよう」
 「這いはただやるのは辛いんだ。コツがあるんだよ。下半身の鍛錬だとか言う人がいるけど、あれは間違い。」
 「軸足に体重を乗せるときに、骨盤を引き上げる。そうすることにより、大腿にかかる体重がお尻に乗るようになるんだ。今度は前に出した足側の骨盤を引き上げながら体重を前足に移して行く。」
 「その時に足の裏側に釘があって足に貫通しないようにそおっと足を引き上げる様に踏みながら体重を移して行く。」
 「足の甲になにかを載せていて、それを落とさない様に足首をキープしながら、ゆっくりと内側に弧を描きながら進んで行く。前に足を下ろす時は、探る様にゆっくりと。」
 「左の骨盤を引き上げると、上体が自然と回転して、右肩が左に開く。手は前にかざし、楽な位置を探る様にする。」

 以前、有名な先生に「這い」を習った事がある。
 その時は、「地球を支える様に」「背骨を縮める」「背骨を伸ばす」というようなイメージを終始教えられ、全く消化できなかった覚えがあった。天野先生は具体的に細かく教えて下さるので、以前丸一日やって解らなかった事が、10分前後の短い時間で、自分なりに消化でき、その先生の論理を少しでも理解できた自分に驚いた。

 「人間は、解らないままに自分の体を動かしている。パソコンの様に取扱説明書がある訳では無い。大氣拳は、その人間の取扱説明書のようなもんだな。」

 「よく空手でも腰を切るというだろ。じゃあ、腰を切るってどういう事なんだ。解らないだろ。大氣拳的に言うと骨盤を上げ下げする事なんだよ。人間は、骨盤で動いてるんだ。」

 「肩幅に立ってみな。そしたら骨盤を左右に上げ下げしてみな。」
 「右の骨盤を上げたら、右足に体重がのるだろ。それを左右に連続して行う。骨盤が下がった方の足は、地面から話す様にして。」
 「そうしたら、手を前にかざして、指先を前にして、両手を大きく回す。」
 「お腹からオデコの当りまで、円を描く様に。」
 「左手は、自分の中心よりも右に行かないようにして、右手は左に行かないように。」
 「手のひらは、常に地面と平行にするようにして、全身が水あめの中に動いているイメージを持つ。」
 「水あめの抵抗があるから、手だけでは回らない。体重移動しながら、上体で腕を先導する様に体全体で水あめを手でかき混ぜるようにする。ゆっくりと水あめの圧力を感じながら。」
 「そうしたら、それを行いながら、前に歩いて見よう。」
 「前足の大腿を内側に絞めて、後ろ足をひきつける様に」
 「下がる時は、少し内股になる様に」
 「その中でもしっかりと骨盤の上下を忘れない。」
 「体重移動をする事で、上体も左右に若干ゆれる。」
 「そうしたら、今度は回す手を交互に回して見よう。」

 上体がずれる事で、相手の中心から体をずらす事が出来、回す手は、攻守一体となっている。そして、水あめの中を全身で動いている意識が、体全身で前進後進をする意識を作るというような説明を頂く。
 20分ぐらいこの動作をおこなった。手を意識すると、腰の動作が上手く行かず、腰を意識すると手がおろそかになる。ホンの瞬間に「あっ」というような全身の一体感を感じるのですが、どうすればそれが得られるのかわからず、持続しない。

 「立禅を行っているときも、左右の骨盤の上げ下げはあるんだよ。それが物凄いスピードで行われていて、コマのようなモノかタービンンのようにお腹の中心で「ギュンギュン」と回っているようなイメージだな。」

 「大氣拳は気の拳法だと言われている。しかし、気というのは忘れてもらっていい。澤井先生のころは良く気の話しをされたけど、気という抽象的な表現は使いたくない。脱力した状態から全身で瞬時に引く「力」が「気」と言われているものと考えて欲しい。うちでは「後方発力」というんだよ。」
 先生は、立禅のような上体から、瞬時に沈身し腕を引きひいた。(その間0.1秒ぐらい)
 「フンッ」という発声がガード下にこだまし、1mぐらいの距離で見ていた私の前の空気が震えたようなに感じた。

 「全身で引き込み、その瞬間にその緊張を開放してやる。これをどんな状態でも、何度でも行えるようにするのが立禅なんだよ。」
 「立禅をしている時は、どの瞬間でも四方八方に力をこの力を発っせるように意識して行うんだ。」

 自分も先生の真似をして、後方発力を行った。
 「脱力した状態から、かかとを上げて、そのかかとを地面に打ちつけるようにして瞬時に斜め下後方に沈み込み、腕を引き込む。」
 「すぐにその緊張を開放してやる」
 感覚は柔道の選手が組み合って、技をかける瞬間に相手を崩す為に自分の前に引き込む動作に類似している。
 何度も何度も繰り返す。
 最初は、上手く上体と腕が一致しなかったが、繰り返すうちに緊張と緩和のバランスが何となく、掴めてきた。全身緊張と全身開放というような表現だろうか。
 「ほら、出来た」
 「澤井先生は教えてくれなかったから、これを出来るようになるまで10年かかったよ。」

 ああ、そうか!
 立禅の前後の動作は、この後方発力の動作をゆっくりと行っているのか!動作的には共通する。

 「じゃあ、終わり!」
 先生のかけ声と共に稽古が終わった。

 単純な「前に出る」「後ろに下がる」といった今まで無意識に行っていた動作を、骨盤を中心に全身を連動させる事により、とても迅速にそして合理的に動けるという事が、稽古と通して、そして先生の速さを目の当たりにして理解する事が出来ました。10年間何万回と繰り返してきた空手の動作の中でそれに気が付かなかった事への悔やみと、大氣拳と天野先生に出会わなければ多分それに気がつかなかったであろうという恐怖心と、そして出会えた自分の幸運に感謝しながら、自宅への帰路へとつきました。

 「教えられると簡単だろ」という先生の言葉が、とても印象的でした。

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フレームの中の交流組手 会員NAZ 2003/01/01

「NAZさん、組手出れないんだよね? 撮影お願いします!」。
組手の恐怖から開放され放鬆しきった私に新たな任務を与えた先輩のこの一言で、私は今回、ビデオカメラマンの視点から組手を見ることが出来ました。

太氣会には大きな行事が年3回あります、春と冬の交流会と夏合宿です。
私自身、夏合宿は参加させていただきましたが、入会が春の交流会後だったため交流会はこの冬が初めてでした。
怖くもあり、楽しみでもあった交流組手には私も参加したかったのですが、1ヶ月前に怪我をしたアバラが完治できず辞退させていただきました。
そこで冒頭の一言につながるわけですが、このレポート自体は先生から「レンズを通して気付く事もある」とアドバイスを頂き、マウスをとりました。

ビデオ撮影を務めるのは今回が初めてで、不慣れなためフレーム内に丁度よい大きさで拳士の動きを納めるのに大変苦労しました。 ですから正直、組手の内容は追っていけませんでした。 そんな中でも漠然と感じられたこと、そして、その後の練習で天野先生が指摘されていたことなどから書かせていただきます。
先に書いた通り、太氣の組手をフレーム内に納めるのは初カメラマンを務める私にとって大変でした。 そんな苦労の中で感じられたことが一つあります。 それは組み合わせのパターンにより、開始した場所からの移動距離に違いがあることです。 
太氣の組手はおよそ30余名の拳士が円陣を組んだ中で行われましたが、その広さはリングよりおよそ1周りほど大きかったでしょうか。 その中で経験の浅い拳士同士の組手では、移動が殆ど無くスピードもそれ程でない為か動きに予想がつきやすい為か、フレーム内に納めるのにあまり苦労はしませんでした。 次に経験に格差がある場合は一方的に経験の浅い拳士が追いやられ、リングのようにロープで囲われてる訳ではないので倒れなければ何処までも、という感じでどんどん追いかけないとフレームアウトしてしまいます。  最後に経験の長い拳士同士では複雑で素早い変化の連続で予想もつきにくく追いかけるのが大変、たびたびフレームアウトしてしまいました。

太氣の組手はよく「自分の中心を守り、相手の中心を奪う」といわれます。 奪うために最初に思いつくのが中心に踏み込むことだと思いますが、素手素面の組手で前に踏み込むには大変勇気が要ることです。 私を筆頭に経験が浅いと足や身体が前に行かず、 手だけで攻防してしまいがちです。 お互いがそこに居着いてる訳ですからレンズで追いかけるのも容易です。 天野先生から組手前にナンバ系の[足が出ると手が行っちゃう]動きを練習やセミナーで指導していただきましたが、組手後にはツイスト系の[手が出ると足が行っちゃう]動きも指導していただきました。 この動き、前進の場合は相手を打とうと手を出すと[手が出ると足が行っちゃう]動きなのですが、一方相手が踏み込んできてこちらが下がるときは[足が下がると手が出る]動きになり大変便利な動きです
組手で前に出て中心を奪うための動き以外に、姿勢についても改めて指導していただきました 座った姿勢から立ち上がる力というのは大変大きな力を秘めており、これを組手の前に出る力に活用するものです。 立っているけど座っている、だから強力な力で立ち上がれる、というものです。 この点に関して太氣会の上級者だけでなく、特に気功会の方は上級者から初心者までよく出来ており、天野先生は島田先生の指導に感心されていました。
一方、自分の中心を守ることに関しては[自分の作業机を確保する]事を教わり、これで何度目か分らないほどですが改めて禅の重要性・優秀性を認識しました。
今回の組手の経験と指導で今後ますます太氣拳士はフレームに納まりにくくなることでしょう。 次のカメラマンはどなたが務められるかわかりませんが大変苦労されると思います。 私は遠慮させていただきたいと思っています。 フレームに納める苦労もありますが、怪我で組手に参加できなく、一人寂しい思いをするのは一度っきりにしたいと思います。

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4月7日交流会の感想 会員Y 2002/05/03

 4月7日の交流会で初めて組み手をやりまして体感したのが、猛烈な恐怖感と息切れと翌日からの筋肉痛でした。推手を始めて最初のころも、息切れと筋肉痛は大変なものでしたが、組み手においてはそれに恐怖感が加わり、息切れと筋肉痛はもっと激しくそれを感じました。殴り合いなどしたことないので、しょうがないかなとは思いますが……。
 私は大気会に入会してやっと半年を過ぎたぐらいの人間です。推手については、多少やっているときの苦しさ、次の日の疲れなどは始めた当初よりは軽くなり、少しは上達しているんだろうなと自分ながらに感じておりましたが、組み手におけるこの緊張感と息切れと筋肉痛は、年数を経れば果たして軽くなるものなのでしょうか?
また、やっている最中も終わった後も、自分がどんなふうに動いていたのか余り記憶がありません。多分舞い上がっていたのでしょうね。初めてやってみた組み手ですが、正直言って自分が強くなっているとは余り思えませんでした。(始めて半年だから当たり前ですかね)
 さて、交流会が終わってしばらく日数がたってからの練習後に、先生が次のようなことをおっしゃっていました。「組み手は遊んでいればいいんだよ。遊びなんだから早く終わらせる必要はないだろう。早く楽になりたいから決めちゃいたいと思うんだろうけれども、そうじゃなくて最後まで泳ぎ切ってやるというつもりでいいんだ」というような内容だったと思います。私は後ろの方で聞いておりまして、「そうか、おれは早く終わってくれないかなということばかり考えていたな」と、ちょっとばかり反省しました。
 それにしても、自分が強くなっているような気が余りしないので、ある日の練習後の雑談で、「続けていれば強くなれるんでしょうか」とK先輩に話したところ、「強くなるけれども、強くなっても自分ではわかりづらいものなんですよ」と話されて、ほっとした気がしました。余り目先のことにこだわらないで、長く続けていきた
いと今は考えています。

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海外赴任中の会員から 2002/04/13

 ホームページの更新をチェックしています。
 練習を頑張ります。

 この間、「太気拳解体新書」のコピーを、拳法をやっていたという日本人(邦字紙記者)にあげたら喜んでいました。
 「滅茶苦茶おもろいですわ。でも、分かるようで意味が分からない」と訳の分からない感想を述べておりました。彼らも、立禅を別の名前でやらされるそうです。しかし、「何の効果があるのかは、みんなよく分からない」とのことです。
 なぜ、どこの流派も立禅を取り入れるのでしょう。「澤井健一という人がこれをやって強くなったから」が理由なのでしょうが、訳もわからずやらされている彼らもかわいそうです.もっとも,やらせているほうも訳がわかっていないのでしょうが。

 私の立禅を「いつも遠くから見ていた」という外国人(中東系)と先日、話す機会がありました。
 「あなたはいつも何をしていらっしゃるのですか」
 --中国武術のトレーニングです。
 「気功と関係があるのだと思いましたが」
 --自分は気功としてやっているのではありません。話すと長くなるし、理解しにくいことなので、簡単には説明はできませんが、ま、関係あると言ってもいいでしょう。
 「やっぱり!!あなたは武術をどのくらいやっていらっしゃるのですか」
 --この武術は5,6年くらいになります。以前は日本の武術をやったことがあります。十五歳の時からですからブランクを入れると、二十年くらいになります。
 「オー!!二十年も。するとあなたは心臓を意識的に止めることができますね」
 --・・・・・・・??!!。そ、そ、そういう人もいるかもしれませんが、私は絶対にできません。日本の武術をやっていたときにはこういうトレーニングはやりませんでしたし・・・、いやいや、そういうことではなく、あ、あの、あまり、そのような話は信じない方がいいと思いますよ。

 やはり立禅は、知らない人にとっては神秘なのです。神秘のベールは、トンデモ武術家に居心地のいい空間を提供するということです。言語武術家・口先武術家には、一番、居心地がいいのではないでしょうか。

 そのうちこちらの武術事情でもレポートします。

 フィリピン 源

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12月23日納会 浅野早嗣名 2002/01/28

 「役に立たない練習やってるね」
 わたしの立禅を見て、島田先生がこの日最初に発した御言葉です。
 「こういう立禅を組んでみろよ」
 島田先生が教えてくださった立禅は、わたしが組んでいたものとは一見対極にあるようなものでした。その立禅は組んでいると1分もしないうちに足がキツくなってきます。
 島田先生は、この禅を組むことで導き出される感覚を説明してくださいました。

 天野先生から「集合!」の声が掛かり、全員が集合して島田先生の太氣拳講座が始まりました。この日指導してくださったのは何種類かの練と半禅、そして相手と向かい合い前腕をお互いにぶつけ合い、その振動から体の中の爆発を導き出す方法です。
 写真でしか見たことが無い練り・練習の度にやっている練・以前天野先生から教えていただいたのにも関わらず、何時しかやらなくなりすっかり忘れていた練等をやりました。
 講座は真剣な中にも島田先生のユーモラスなお話に、皆の笑顔が溢れる和気藹々としたものでした。(去年の10月に初めて島田先生に御指導していただく機会に恵まれました。実際にお会いするまでは数々の伝説から推測して凄く怖い人なんだろうなと思っておりました。ところが、勝手な想像はものの見事に裏切られました。島田先生は人間味に溢れた方でした。人徳というものでしょうか?他の人が言ったらピリピリした雰囲気になってしまうような言葉も、島田先生の口から出ると、そうはならないのです。)
 講座の中で島田先生が言われた「技って言うのは、即これはこうだっ、て考え方をしちゃうと千の力を持っているものが一になってしまう」と言う御言葉が印象に残りました。この日教えていただいたことは、言ってみれば宝の在りかを示した地図です。この日の参加者全員が持ち帰り、自分のスコップで掘り出さなければなりません。宝をどれだけ掘り出せるかはその人次第です。

 15分程の休憩を挟んで組手になりました。わたしは弟弟子2人・会友員の方・兄弟子・島田先生のお弟子さん2人の計6人の方と組手をさせていただきました。
天野先生が誰と誰をやらせるか決めて島田先生が組手を仕切る格好です。要所要所で島田先生から各人にアドバイスがあります。

 「相手と同じ呼吸でやらないっ!」
 「もっと遊べっ!遊んでみろっ!」
 「緩急をつけろっ!」
 「キレが無いっ!」
 「止まるなっ!」
 「腰を落とすんだよっ!」
 「痛め合うのが目的じゃないからね」
 私の受けたアドバイスです。

 未熟者だからだと言われたらそれまでですが、アドバイスされたことをやろうやろうとする気持ちが先行し、体に任せた組手が今ひとつ出来ませんでした。これは今後の大きな課題です。しかし未熟者なりにも収穫はありました。それはおそらく殴り合っている相手にすら気づかれないもので、自分だけが知り得るものです。それは体の中から溢れてくる感覚です。島田先生の御言葉をお借りすれば爆発です。幾つかの局面でそれを確実に感じました。

2002/01/28

 その後天野先生の組手が始まりました。それは一言で言えば、人はこうまでなれるものなのか、という感じです。
 残念なことにこの2日前に島田先生は交通事故に遭われてしまいむち打ち症の状態でしたので、この日は胸をお借りする事は叶いませんでした。実はこの日は島田先生に胸を借りるつもりで保険証持参で来ました。顔がボコボコになるだろうから正月は実家には帰れないだろうと考えこの前日に実家に帰りました。
 島田先生に残念ですと言ったら「胸を借りたい?10年早いよっ!」と笑われました。
 天野先生や島田先生を日本刀に例えるのならば、さしずめわたしは鉄芯の入った木刀といったところでしょう。斬ることはできません。この日組手を通じて今後の自分がやるべき課題が嫌と言うほど突きつけられました。
 しかし、それは同時に楽しみでもあります。
 何故ならば、それをやれば自分が先に進めるからです。組手は怖く苦しく痛いです。
だけど、これがあるから止められません。
 島田先生・天野先生をはじめ、この日これからのわたしを強くしてくださる為に手を合わせてくださった皆さん、どうもありがとうございました。

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島田先生の講習会の感想と初めての組手体験記 奥津宣幸 2002/01/20

 太気会東神奈川支部に入会して1年半になる奥津と申します。

 私は33歳から太気拳を始め、武術経験もありませんでしたが、東神奈川支部の大関先生そして太氣会代表の天野先生による大変親身な指導のおかげで、私が習い事した中で一番長い一年半という期間、太気拳を続けることができました。組手はまだ先のことと思っていましたが、大関先生の勧めにより、とうとう太気拳の組手に挑戦することとなりました。組手についてはまだ見たこともなかったので正直かなりビビっていましたが、組手前に島田先生の講習があると聞き、そのことは楽しみにしていました。

1. 島田先生の講習会について

 島田先生のことは、漫画家の板垣啓介先生の著書に書かれた組手体験談や秘伝での島田先生の初インタビューを読み、鬼のように強いということと大変味のあるインタビューの内容から先生のおおらかな性格が感じられ、一度、見てみたいと思っていました。(本当は、お会いしたいと書くのが正しいですね。希少な生物を見るような表現で申し訳ありません。)

 そして、当日、島田先生には、澤井先生から伝授された太気拳の基本である立禅・歩法・打撃を指導していただきました。島田先生の動きはどっしりと腰を落としながら時には機敏に動くという、まるで重戦車がときにF1車のコーナリングを見せるというような素晴らしいものでした。また天野先生とも雰囲気が違い、島田先生の『太気拳は爆発だ。』という言葉のとおりに、動きながらいつでも最大の力が出せる状態を維持しているのが感じられました。
 太気拳の基本ができていれば先生がたのような動きができるのだということが実感でき、基本をもっと練習していこうと思いました。

2. 組手について

 島田先生の講習の後、とうとう組手が始まりました。
 最初は、中堅どころの先輩同士からの組手から行われました。相手が攻撃してこようが後退せず反撃をする先輩方の組手を見て、こんなことが自分にできるのとかなり不安になりました。(当然、できるわけがありません。)
 その後は、キックや空手経験者で太気拳組手が初めての方々の組手が行われましたが、先輩同様に勇気ある組手を行い、ますます不安になりました。
 そして、私が指名され、始めの方に組手を行った中堅の先輩が相手となりました。その先輩は先の組手で直突きを有効に決めてきたので、できるだけ動きまわり、直突きがくる瞬間に横に回りボディーを打つということを心がけて組手に望みました。
 実際に組手が始めると先輩が余裕をもって私の攻撃を待つ形となり、私はその余裕に対し攻撃を出すことを躊躇しながら、横に動きボディーをねらい、先輩が反撃すると逃げるという情けないパターンを繰り返し、組手を終えました。
 反撃を恐れて逃げてしまい、中に入り推手の感覚で組手ができなかったことは反省していますが、組手独特の緊張感は日常生活にない刺激的なもので、再度挑戦してみたいと思ってしまいました。
 相手の中に入れなかったのはまだ推手に自信がなかったことが原因だと思いますので、今後はこの組手の感覚を忘れずに推手の練習を行い、自信をもって相手の中に入れるようにしたいと思います。又、この組手の後に足をつってしまったので基礎体力も鍛えなくてはいけないと思いました。(本当に情けなく思います。)

 しかし、まだ、私の組手体験は終わりませんでした。私の組手の後に指導員クラスの方々の組手が行われ、その後に天野先生との組手が行われましたが、私も天野先生に相手をしていただきました。
天野先生との組手は反省点を上げることもできないくらい全く話にならないものでした。
 とにかく天野先生の動きは素早すぎて目が追いつかず、私が攻撃をしようと手を出した瞬間、そこに先生の姿はなくなり、知らぬ方向から攻撃されました。先生の攻撃は寸止めというより、皮止め(肉止めと言ったほうが正しいかもしれません。)で、素早い動きの中から先生の拳が気持ちよく鼻にムニュッと食い込む、がダメージは全くないという素晴らしいものでした。又、先生は素早い動きをしながらも常に最大の力で攻撃ができる状態にあるので、攻撃するどころではなく逃げだしたくなるような恐くてたまらない状態でした。

 ということで、天野先生との組手はなにもできませんでしたが、これからも少しでも先生に近づくように太気拳の練習を続けていきたいと思います。

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平成13年12月23日に行なわれた組手稽古会の模様 富川リュウ 2002/01/07

 太氣会・会員№073の富川リュウと申します。
 今日は、平成13年12月23日に行なわれた組手稽古会の模様を報告いたします。

 今回の組手稽古会は、太氣会の会員と会友員が参加、島田先生の主宰する太気拳気功会のお弟子さんたちも4名が参加されました。また月刊誌「秘伝」の取材の方もいらして、天野先生、島田先生を含め盛況でした。

 組手に入る前に、島田先生からの指導が45分ほど行なわれました。指導の内容は、各種の練りや歩法、打拳など、天野先生とはまた違った動きで、各自それぞれにためになったようでした。

 組手稽古は、島田先生が立会いとアドバイスを担当し、天野先生がランダムに2名を指名して、はじめはAさんとBさんが行ない、続けてBさんとCさんが行ない、次はCさんとDさんが・・・という要領で、ひとり2回ずつ組手を行なっていきました。
 この組手の中で、一人一人に対しての島田先生からのアドバイスがあったのですが、急なアドバイスに戸惑いながらも、それを自分の組手に生かそうとみんな必死になっていました。
 当たり前の事ですが、すぐにはそれを生かした動きが出来ない者がほとんどだったのですが、中には目から鱗がとれたように急に上手くなってしまう者もいて、みんなそれぞれに成果があったようでした。
 そして最後には、天野先生が元立ちをされ、「希望者はどうぞ」と言われ、太気拳気功会の3名と太氣会の7名ほどのお相手をされました。

 腰の調子が思わしくなく、見学のみの参加だった私ですが、天野先生から「技術云々ではなく、魂で感じた事を書いてみてはどうか・・・」と助言を受けましたので、印象的だった組手について幾つか感想を書かせていただきます。

 太氣会の古参の先輩である、Aさん、Rさんは、島田先生から「力量が十分にあるんだから、もっと相手を圧倒する、一方的におしまくれるような組手をしてみなさい」と言われていました。私から見ると、Aさんは小柄ながら素早い動きで相手を翻弄し、Rさんは体格を生かして重戦車のようにズンズン前へ出て、十分に相手を圧倒しているように見えたのですが、島田先生は「もっと一方的に相手を圧倒して、爆発の一撃で相手を倒すのが、太気拳としての理想の組手なんだよ」ということを教えたかったのだと思います。

 太氣会の最古参の大先輩で、養生館で治療や武術指導もされている大関さんは、A先輩、R先輩をしのぎ、いちばん天野先生に実力が肉迫している誰もが認める実力者です。
 大関さんの組手は、見ていてとても安心です。まったく危なげなく相手をコントロールします。未熟者の私の目には、その強さの秘密?がよく解らなかったのですが、先輩のKさんがいうには「どんな時にも軸がぶれないし、重心がしっかりしているからだよ」と教えてくださいました。確かにビデオを見返してみるとKさんの言うとおり、攻める時、守る時、走る時、打つとき、蹴る時、いかなる時においても、安定していて姿勢が崩れていません。「ああだから端から見ていると、安心感のある危なげの無い様子に映るんだろうな」と思いました。だけどこの時、大関さんと組手で対峙している相手はどういうふうに感じていたのでしょうか・・・?

 天野先生の組手は、一言でいうと、まるで芸術品のようでした。軽やかなステップと、しなやかな身のこなしで相手の攻撃をかわし、全く力みの無いところから鋭い打拳が打ち込まれます。ほんとうにひとつの完成された「武芸」といった趣(おもむき)があります。そしていったん戦闘モードに入ると、眼つきが変わり、重心が下がり、動きが倍速になるのです。このとき対峙している相手は、たぶんとっても速い動きに感じているのではないかと思います。
 というのは、ある稽古のときに天野先生と対峙していた私が、「速イェー」と思わず声をあげてしまって、この速さは何なんでしょうか?とお聞きした時に「速さとは物理的な速さだけではなくて、感覚的な速さなんだよ。そこからこうは来ないだろうと思っているところから、予備動作が全く無くスーッと来られると、相手は4倍速にも感じるんだよ」と言われたことがあったからです。

 天野先生や大関さんとの組手は、私にとっては、怖くて楽しみな未体験ゾーンですが、近い将来体験できることを心待ちにしています。

 天野先生との組手が終了すると、日も落ちかけてきて、平成13年度の最後の組手稽古会も無事終了となり、この後、場所を桜木町の中華料理店に移し、太氣会と太気拳気功会の合同の大忘年会が開催され、皆それぞれに、澤井先生時代の太気拳の話や今後の太気拳の行く末、格闘技談義などなどに花を咲かせて、楽しいひと時をすごしました。

※)ちなみにこの組手稽古会の模様は、2月14日発売の月刊誌「秘伝・3月号」に掲載される予定との事です。