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メールQ&A 天野敏のテクスト

立禅における手指の感覚

Q:
立禅をして約半年経ちました。1日最低でも朝晩合わせて30分くらい、それと這いを20分は行ってます。
近頃、手の指先に時折立禅中にピリピリ、チクチクという感覚がきます。特に腕が疲れているわけではないのですが、変な感覚です。
それと左右の腕の張りのような感覚を感じ、身体全体が固まってゆくような感覚を感じますが、これは一体なんでしょうか??まだリラックスできてないのでしょうか??

禅を組んでまだ半年ですが、挫折しそうな時があります。一体何の為に立ってるのだろうか??先生にもこんな時期があったのだろうか?と毎日悩みながら行ってます。そこから生み出される答えとはなんなのか?と。
でも「太気拳」を信じて、強くなることを信じて行ってます。時間がございましたらアドバイス願います。早く直接天野先生習いたいです。

A:
メール拝見しました。
現在感じている色々な疑問、煩悶は誰でも経験するものだと思います。きちんと練習している証拠ともいえます。

さて、まず手指などの感覚の変化ですが、これはよくあることです。手先の膨張感や冷感、あるいは熱感は立禅中にはよく起こります。
よく気功の本には、これが重要だと書いてあったりしますが、特に意味はないと思います。立禅で日常生活の緊張が静まり、神経が別の整い方をしているからだと思います。これからもきっと、色々な感覚が出てくるかもしれません。それを楽しむぐらいでいいと思います。
立禅は不思議なもので、たとえば風邪で鼻が詰まっていたりしても、立禅を組むとすっと鼻が通ったりします。それがなぜかと考えるのもいいですが、そういう身体の不思議を素直に受け入れる事が一番大事なのかもしれません。頭が「理解」と言う事を出来なくても、身体は実に素直ですから。

ですが、もっと重要な事があります。腕の張りです。これは重要な事です。立禅で身体をまとめていく時に、この感覚はとても大事な事です。そのうち、腕だけでなく、首や肩、腰・膝、そして足首と言う風に様々な部分で張りを感じていくと思います。あるいは重苦しく感じるとも表現できるかもしれません。その感覚の評価は、お会いできればすぐにでも分かるのですが。言葉で説明しづらいですが、その感覚なしでは拳法は成り立たないと言えるくらいです。きっと腕が身体と繋がり始めているんだと思います。頑張って練習を続けてください。

「一体何のために立っているんだろう、これでいいんだろうか、いっそ今日でやめてしまおうか」、そんなことは今まで何回思ったかしれません。立禅はこうなのかな、と少し分かりかけてきた気がするのは本当に最近の事です。でも、これで良いんだと言う正解は無いと思います。たとえ毎日禅を組んでも、決して同じ禅は組めません。その時その時で、課題が違うからです。感じが違うからです。それこそ、今まで生きてきた年月を考えても、一日と同じ日が無かったのと同じです。「立禅はこう組むのが正しい」なんていう人がいたら、きっとその人は禅を組むのをやめてしまった人です。禅が面白いのは、昨日と違ったものが今日感じられるからです。それが進歩だと思います。一つの答えが分かると、また次の疑問が出てきます。決して後戻りがないのが、武術だと思います。

いつか、手を触れ合う時が来るのを楽しみにしています。

太気会 天野