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天野敏のテクスト 閑話休題

雑誌の連載が終了

雑誌の連載が終了。「組み手再入門」の題で一年余り書いてきた。書く事はいくらでもあるような気がするが、書いているうち にもどかしくなってしょうがなかった。考えてみれば当たり前で、組み手に関していくら書いても隔靴掻痒、言いたい事、伝えたい 事の距離感をべらぼうに感じた。それがストレスで多少嫌気が差した、というのが正直なところ。それで、そのストレスを今度は 映像化すれば少しは晴れるか、ということで同じ題名「組み手再入門」で映像を先日撮り終えた。なんと言っても百聞は一見にし かず、だ。本当を言うと、題名は「組み手改造計画」とでもしたかったが、連載とリンクした内容だからという事で同じに決まった。 キーボードに向かって組み手について書いているよりどれほど判りやすいか、と思っていたがこれもなかなか難しい。カメラに向かっ て話しているうちに、肝心な事を言いわすれたと気がついたりする。それが撮影中だったら撮り直しもきくが、終わってから思い出 すなんていう事もある。まあ、連載はそのうち書籍化するから映像と書籍と両方を参考にしてもらえれば、少しは組み手に行き詰っ て悩んでいる人の助けになると思う。

空手にしても他の武術にしても形にばかり拘って、組み手に工夫が無さすぎるって言うのが連載を始めた主旨。みんな拘っている のがどうでもいい事に僕には見えてしょうがない。どこも最初に決まった形の構えがあって、そこから全部始まるなんていう不思議 な事をやっている。そんな常識なんて役に立ちはしませんよ、という所を見取ってもらえればいい。どんな流派だって良いが、当た り前に組み手をやれば太気の組み手に似てくるというのが持論。当てっこだとか、ゲームで良いって割り切るなら既存のままでいい けどね。

今回の映像には、今年の夏合宿の組み手を幾つか参考として載せる予定。合宿のときはそんな気はなかったので、のんびりとした 指導組み手だが、それなりには役に立ちそう。組み手の技術というだけではなく、雰囲気から組み手に対する取り組み方を感じ取って もらえれば良い。組み手が殺伐としたものではなく、自分の課題に取り組むためのものだという捉え方が出来ればいいと思う。もし 機会があったら太気以外の組み手と比べてみると、違いが一目瞭然で面白いかも知れない。

ただ、映像にするのを選ぶために何回も同じ自分の動きを見るのは正直言って辛い。段々あらが見えてきていやになってくる。 まあ、約束したからしょうがないか、という気分。恥を書くのもなんかの薬になって、そのうち役に立つ事もあるかもしれない。 しかし、映像でも喋ったけれど、25年間毎週組み手をやったというのは、考えてみればよくやったよね、という感じ。好きなんだね、 組み手が。下手の横好きか、それとも好きこそものの上手なれ、なのかは皆さんの判断に任せます。撮ってしまったらもう俎板の上の鯉。

今回のカメラマンは、実は地元のサーフィンの先輩にお願いした。勿論撮影中はそんな話は全然しない。ところが昼食でアシスタント の若者がやはりサーファーと判り、話が盛り上がる。聞くところによると、最近格闘技系の選手がサーフィンを良くやるとのこと。ブラジ ルの選手がやったというところから始まったらしい。勿論バランス感覚は要求されるから、そう言うところがトレーニングになるんでしょ うね、と言う。まあ、それもあるけど、それより判断力だろう、というのが僕の感想。やらない人はわからないと思うけど、一瞬の判断を 常に要求されるのがサーフィン。判断ミスをすると場合によっては大怪我をする。波に乗る瞬間、どっちにいくか、周りに何処に人がいるか、 避けられるかそうでないか、同じ波に自分以外の人が乗っていないか、そのほか色んな事を瞬間に見取って乗る、あるいは乗らないを決定する。 時には乗ってから降りる。それはほとんどの場合、ほんの一瞬でしかない。見て考えるのではなく、見た瞬間に判断する、決定する。 勿論乗ってからも、ボードのコントロールは考えていては遅い。感覚で動かす。そこら辺は組み手と同じで、自分の場合は組み手の感覚が サーフィンに少しは活きたかも知れない、そんな事を話して昼休みが終了。自分は昼食後に3分でも寝ないと午後は眠くなる性質。 それをしなかったおかげで午後の撮影はNGの連続。皆さん、ご迷惑をおかけしました、反省はしてます。