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天野敏のテクスト 閑話休題

猿の惑星

日曜日に台風4号が関東に接近。上陸は避けられたものの、沿岸をかすめて通過。その日は朝から雨。稽古を始めてからしばらく は雨と風がけっこう激しかったが、そのうちに雨が止む。雨があがると同時に、風が北よりに変わる。「あ、台風が東に抜けたな」と、 頭の中で天気図を思い描く。天気のせいか何時もより人が少なかったが、軽く組み手をやって稽古を終わる。 稽古終了後、家に帰ってから海を見に行く。海岸にでた途端に凄まじい波の勢いに圧倒される。海鳴りが襲い掛かるように響く、肌があ わ立つ。台風の風に引き起こされたうねりが海岸に近づく。浅瀬に乗り上げたうねりは力の行き場を失い、盛り上がり、波頭を切り立て て海岸に押し寄せる。7メートルから8メートルに達した波が一気に崩れ落ちる。その質量、そのエネルギーが何度も何度も崩落、激突、 飛散。飛沫は風にあおられ、光をひいて舞い上がり、飛び散る。海が煙る。
自然の圧倒的な力を眼の前にすると、人の力のなんと無力なことか。人は自然の中に生きてきた。でも、自然は人の為にのみあるわけではない。
環境破壊は進む。人の歴史は自然を破壊してきた歴史。文明は全てエネルギーとしての森林を切り開くことから始まった。ヨーロッパも そうだし、メソポタミアで発見された最古の叙事詩、ギルガメッシュも森の神との戦いの物語だ。日本人の中にある原風景としての里山も、 何の事はない森林を切り開いて作り上げたものだ。
しかし、自然は強靭。海の汚染も、オゾン層も、人の尺度で考えるから深刻。だが果たして地球の尺度からするとどうなるのか。40億年、 50億年と言う地球の尺度から見ると、案外なんて事のない汚染なのかもしれない。

人が滅び、建物が崩壊して地球上から文明の一切の痕跡がなくなっても、太陽は輝き、海はうねり、風は吹き渡る。そしていつか再び、 未知の生き物が文明を起こし、太陽の恵みを受け、海鳴りや風を聞きながら生きていくのかもしれない。

う~ん、どうも台風の話から猿の惑星っぽくなってきた。