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会員・会友員のテクスト 富川リュウの太気拳修行記

平成23年・夏の章

ぱちぱちパンチ

7月10日の稽古に参加した。組手では、天野先生からのご指名でOKBさんと当たった。OKBさんは、
この日が組手お初のデビュー戦。トミリュウが軽ぅ~く、お相手…のハズだったのにもかかわらず、大苦
戦を強いられる。OKBさんは、目付けが良い、打たれても退がらない覚悟が良い。組手の後、天野先生に
も16番先輩からも褒められていた。一方のトミリュウはというと、お互いに足を止めてのぱちぱちパンチの
応酬で、久しぶりに連打しすぎて疲れてしまった…。組手の後に天野先生から言われたことは「あういう風
に打たれて、今までのお前だったら下向いたり、諦めたりしていたんだよ。ただ、今回は組手デビュー戦の
OKBが相手だったから、トミリュウにも意地があったんだよな。途中で諦めそうになったけど、それじゃ
ダメだって思い直しただろ」なんでそこまで人の気持ちがわかるんでしょうか?とトミリュウ。「組手を見
てりゃわかるよ。だけどそれが大事なんだよ。そういう経験をして、初めて覚悟みたいなもんが出来てくる
んだよな」なるほどトミリュウには、やはり覚悟が無かったってことですか、今までは…。

夏合宿の前と後

夏合宿の前までは自分なりに色々と「チカラの正面とカラダの正面。それを意識しての左右のステッ
プから入って行くライン取り」などなどを工夫して稽古していた。7/29,30 の夏合宿での天野先生からの
課題は、「ああきたらこうするとか、こうきたらああする、何てことは役に立たない。大切なのはどうあ
るのかということと、その状態を維持したまま動くこと」ということだった。

2日間の間に何人かと組手をして分かったことは、やはり考えて動いても上手くいかない。ある状態を
保ったまま、考えないで感じて動くしかない――ということだった。そして問題となるのは「ある状態」
ってどんな状態か? それは「立禅の状態だ」と言ってしまうと、じゃあどういう風に立禅を組めばいいの?
と課題は立禅に帰結してしまう。

夏合宿の2日目夜のバーベキューでの飲み会の際に、M島先輩からアドバイスをいただいた。トミリュウ
は手打ちだけになってて、腰ハラが全然ないんだよな。手は脱力しておいて、腰から打ち出すチカラが手に伝
わってポーンと行く感じなんだけど、その逆に腰ハラがスカスカで手にばかりにチカラが入っちゃってる。

8月1日からは、外での自主練のほかに、室内でストレッチをする際に腹筋運動50回も毎日のメニュー
に加えた。そして立禅では、それまで少しだけチカラを入れる様にしていた腹部のハラマキエリアに、より
一層チカラを込めて立つようにしてみた。ハラを締めることで気持ちも引き締まり、8月7日なんだこれ
・・・組手では「今日の組手では顔つきが違ってたよ」と16番先輩からも褒められた。

コの字クランプの差し手

8月14日の岸根での稽古の終わり際に、天野先生から差し手についての説明があった。タイミング
を合わせるということ。半歩でも間合いを詰めて差すということ。そんな説明であったが、自分では、
この日の立禅でソケイ部の角度を直されたことにより、腕の下に水平に挟み込むようなチカラが感じら
れたことも、差し手に重要な要素なのではないかと思っていた。

次の日からの自主練では、この辺に重点を置いて稽古に励んだ。色々な角度から差し手で接触して、
ハラのチカラで真下に落とす感覚を養っていった。

六面力が無い

9月4日の組手では、自分ではハラにチカラがみなぎっていて充実感のある組手が出来た気分でい
たが、16番先輩やI先輩からの評価は低かった。すぐに横を向いてしまう、すぐに諦めてしまう等など、
メンタル面の弱さを指摘された。そして一方向にしかチカラが出ていなくて六面力が無い、との指摘も受けた。

自分ではメンタル面の問題はあまり感じていなかったが、六面力が無い点については「おっしゃるとお
りでございます」としか言いようが無かった。この2~3週間の間、ハラのチカラで真下に落とすことしか
やっていなかったのだから…。

判然としない半禅

次の日からの自主練では、この辺に重点を置いて稽古に励んだ。初めは腕で囲んだ空間の開合を糸
口にしてみたが、どうも違ってる感じだった。腕の(仮想の)接点に、上下、左右、前後、の六面力を求
める以前に、ハラの中にその6種のチカラの方向性が存在していないではないか、と気がついたのだ。
特に正面の立禅ではハラにチカラが入っていても、半禅に立ってみると、まるでハラにチカラが無い。
それまでの半禅の姿勢では、せっかく充実していたハラマキエリアを捩ってしまうことで台無しにして
いたのだ。ここの平面を保ったまま這いに移ると、前足に過重が乗る際には後ろ足の踵を高く上げた方が
具合が良いこともわかった。

9月11日の組手では、なかなか良い感触で組手が出来たし、16番先輩からも褒められて嬉しかった。
そして、次の課題もいただけた。それは腕で囲んだ空間の開合と、上下、左右、前後、の六面力をより実用
的にするために、平行四辺形と卍のチカラと充実させるように、とのことだった。

平行四辺形と卍(まんじ)のチカラ

天野先生からは、組手で構えた両手の「右手と左手が重要なのではなく、その間の空間が重要なんだよ」
と言われていた。このアドバイスをヒントに平行四辺形の崩しを腕の間に模索すると、やはりハラマキエリ
アの縁を少しだけ捩って、つまりはハラが主導で、そのチカラを腕に繋げるような作業になっていった。

テコの原理から用語だけを借りてこよう。作用点は手(打拳)、支点は身体の中の繋がり、そして力点は
ハラ(ハラマキエリアの締まり)となる。差し手にしても打拳にしても作用点は手であるが、ここにチカラを
込めても意味がない。力点となるハラにチカラがなければ話にならない。

9月12日からの一週間は、ハラマキエリアの縁を少しだけ捩るように使いながら、色々な角度からの揺
りや練りの稽古を繰り返し行った。

9月18日の稽古では、推手で自主練の成果が確認できた。この日は、つま先ガ二股歩きの歩法をメインに
指導していただいたので、合同での組手は無かったが、M島先輩が声を掛けてくださり、一回だけ軽く組手の

感触も確認できた。16番先輩からは次の課題もいただけて充実した一日だった。「角で当たる感覚」その意味が
わかりかねていたが、翌日の朝練で身体を動かしてみると、なるほどなかなか良い感じが出てきている。まだまだ、
進化の過程にいる実感がある。これからが、楽しみだ…。