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会員・会友員のテクスト 富川リュウの太気拳修行記

第十一部・冬の章

Don’t think. Feel it!

11月28日の稽古では、「圧縮から引き落とす組手」なんてことはどうでもよくなってしまった。とにかく棒を使っての稽古の時から「見て、考えてから動いてるから、全部タイミングが遅いんだよ」と言われっぱなし。けれど最後には、組手でも「考えないで、感じて、反応する動き」がちょっとだけ垣間見えた。

恥ずかしい写真・その1

4年前の2006年9月7日、稽古中にデジカメで写真を取っていただいた。天野先生とトミリュウが並んで映る立禅と半禅のサイドビューだ。翌朝、自宅のパソコンに「恥ずかしい写真」というタイトルで先生からメールが送られてきた。自宅のパソコンは妻との共有で、ほとんど妻がメインで使っているので、「タイトルが怪しくて、スパムメールに間違いないと思って、削除する所だったわ…」と言われてしまった。

さてこの「恥ずかしい写真」その時に見ても変な姿勢で禅組んでるな、と思ったが、今見ても、入会3年目の○○君よりひどい姿勢です。

恥ずかしい写真・その2

2010年12月5日、岸根公園での稽古の最中、携帯電話のデジカメで写真を取っていただいた。トミリュウの立禅の姿勢のサイドビューだ。「また元に戻ってるぞ!」そう指摘され、携帯の小さな画面を見てみると、的である顔が前に出て、盾である腕を支える肩が後ろに退がっている。みごとに組手に不利なフォームで立つ自分がいた。何のことは無い、今年の夏の章に書いた7月4日に直したつもりでいた自分の立禅の姿勢が、また悪い状態に逆戻りしていたのだ…。

悪い点は三つ。骨盤をしゃくることばかりに気を使っていると、ソケイ部は伸びきってしまい、腰ハラの力が出せなくなる。ソケイ部が伸びているのでバランスを取るために顔が前に出て、肩が後ろに引けてしまう。

天野先生からのアドバイスは二つ。ソケイ部をちょっと引いて、腰ハラから力を出せるようにする。そして、両肩で空間を確保するように意識してみて、とのこと。

自分のこだわり

リキむこと、力が入ることは、悪いこと。力が抜けてリラックスしている状態は良いこと。できれば足腰の負担が軽いような、疲れない立禅が理想である――。その思い込みが進化を遅らせていた。チカラを抜くべきか、チカラを入れるべきか。どちらも正解で、どちらも間違い。チカラの入る位置・チカラの入る状態に姿勢を調整し、できるだけチカラを入れずに待機している。そんな立禅が理想なんだと思う。

肩のエクボ

恥ずかしい写真・その1を撮っていただいた頃に聞いた話。「肩のこの部分にな、エクボみたいに窪みができるんだよ。これが大事」天野先生からそんな話を聞いていたが、自分では、それを追求することをしなかった。エクボを作ることにより、肩にリキみが出るのを嫌ったからだと思う。リキむこと、力が入ることはいけないこと。そう思い込んでいたので、4年以上の歳月を無駄にしてしまった。

昨年12月5日にいただいたアドバイスから、正解に近い立禅の姿勢ができてきた。ソケイ部をちょっと引いて下腹部にチカラを保つ。目の前の空間を確保するために肩が少し前に出て、少し上にあがる。この位置に肩をもっていくとエクボが出来る。そして手が効くようになる。

組手開眼?

12月5日の組手では「あぁここが自分の距離で、この形が自分の得意な形なんだな」と思える瞬間があった。やっていたことは前述の立禅の形を保つ事、そして考えないで感じるという事だけである。

 ① ハラを締めておく。
 ② 頭は後ろに。
 ③ 肩で空間を作る。
 ④ 考えて動かない、感じて反応する。

終わってから、天野先生からは「次の組手の時までに、今日の組手の感覚を忘れないように」と言われた。

首が収まる

12月16日、茅ヶ崎特練に参加した際に、天野先生から「立禅での肩の位置が定まってくると、首の位置も自然と収まるもんなんだよ」という話を聞くことができた。日常生活の中で普通にただ立ってたり、歩いていたりする時にも、頭の位置が後ろの低い位置に落ち着いてきている事を自分でも感じている。

Twin Tornado

12月19日に年末恒例の交流会&忘年会が行われた。その中で島田先生からは立禅の基本的なこと、そして立禅での注意点等をセミナー形式で教えていただいた。特に膝、そして脚の使い方をジェスチャーしながら「引き絞るように」との説明があった。以前天野先生からは「立禅では、雑巾を引き絞るように」という説明を聞いたこともあったが、この時に改めて「何をどう引き絞ればいいの?」という疑問が湧き上がってきた。今までの経験から「脚や膝、その辺りを内側に引き絞る」という点は、見た目にはそうに違いないが、そこだけを真似しても足腰が疲れるだけで、似て非なる物、似て非なる状態になる事は気づいていた。

翌朝の自主練で解は得られた。引き絞るのはお腹の中。そしてそれが、腕、脚、へと波及していく。腹の中を発生源とした、みごとな螺旋の渦がここに生まれる。

そしてこれは、正解かどうかはまだ分からないが、お腹の中にサランラップの芯くらいの大きさのローラーが縦に2本あり、これが中心へ引き込む方向、中心から押し出す方向、その2方向に回転するような感覚、これが使えそうだな、という感触が出てきた。はじめの内は、引き込む方向にしか回せなかったり、立禅(正面)ではできても、半禅ではできなかったり、という感じだったが、数日もすると、両方向の回転が半禅でも這いでもできるようになった。

12月26日の稽古では、推手も組手も行わなかったが、年末年始の休暇期間中の毎朝の自主練で、腹の中の2本のローラーの回転を腕の下にまで拡大し、そこに竜巻のような渦を感じるようにしながら立禅や這い、練りを行うようにしてみた。

出来ることを反復稽古で毎日やっていても意味は無い。常に工夫してみることが大事だ、というのが師のいつもの口癖だ。年明けにどんな組手が出来るのか、自分でも楽しみだ。