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会員・会友員のテクスト 富川リュウの太気拳修行記

第十一部・秋の章

腰を流す・背中を抜く

9月17日にまた腰を痛めてしまった。3日間ほど寝込んで日常生活レベルには回復したが、組手稽古ができるまでには、一ヶ月ほどを要してしまった。

この間、立禅での姿勢や力の入れ具合に工夫をこらし、「腰を流して使う」「背中を抜いて使う」そんな感じで、立禅や這いに取り組んでいた。

そんな訳で、10月3日(日)の稽古では、推手は2人とだけ軽めに、組手は見学のみだった。また、10月10日(日)の稽古では、棒の稽古と推手には参加したものの、まだまだ組手は見学のみだった。

中心ねらいはNG

10月17日(日)の稽古で、久しぶりに組手が出来た。久しぶりにしては、そこそこ動けたが、「夏の章」で書いた「自分の正中線で、相手の正中線の脇をかすめる」というアプローチはNGな事が分かった。稽古の後でI先輩がKさんにアドバイスしているのを盗み見て、次の組手へのヒントを得た。

被せる立禅

10月17日の組手の前に、立禅の中で上から下に被せる感覚が出てきていた。10月18日の朝練からは、この辺を応用して組手にも使えるのではないかと考えていた。この被せる感覚は、「後方発力」に近い。「押し拡げる・押し下げる・引き込む」という力の使い方だ。まず「膨張」から入って、次に「収縮」へ。そんなアプローチで、10月31日の組手に臨んだ。

差して拡げる

プランはこうだ。相手の顔の左右どちらかのエラの部分と二の腕を目標に、そこを自分の両腕で押し拡げる感覚でアプローチする。そして一気に収縮へ…。しかし組手の途中で、狭くて入れないことに気づく。そこでプラン変更! まず手の甲で相手の耳脇を差す。そしてそこから手のひらを返して押し拡げる――。「差して拡げる」これは結構うまくいった。そして特に、至近距離でこれが有効なことは意外な発見だった。

11月7日の組手でも、前述の「膨張と収縮」「差して拡げる」というアプローチをしてみたが、格上の先輩を当たったこともあり、あまり自分のイメージどうりには動けなかった。しかし、天野先生と16番先輩からは「なかなか良かったよ」と褒められた。しかも何が良かったのかと言うと、二人とも口を揃えて「低い姿勢が良かった」とのこと。これは自分でも意外だった。天野先生によると「その姿勢のままで居て、その姿勢のままで動ければ、あとは手足はどうだっていい」とのこと。また「そこまで出来ているんだったら、とにかくそのまま動けるように工夫してごらん」とも言われた。

張り付く立禅

色々と工夫を凝らして「差して拡げる組手のアプローチ」を編み出した。この工夫が全く無駄だったとは思いたくない。しかし、根本的な方向性は違っていたようだ。ここに差し入れて拡げて、腕をどうのこうの、手のひらをどうのこうの、と言うは枝葉であって、幹となる部分はほかにある。まず幹を太くすることが必須。要は、初めに出てきた「被せる感覚」これをより深化させれば良いだけの話だ。

11月8日の朝練からは、「被せる感覚」をより深化させ、「地面に張り付くような立禅」を始めた。そういえば5、6年前に、島田先生のセミナーで教えていただいた立禅でのコツのひとつに「自分の中の核の部分の小さな円筒形を圧縮するように…」というような説明があった。その時は???だったけど、今のこれがそうなのかもしれない。

圧縮から引き落とす組手

今までは探手の際に、移動して打つ、移動して体当たり、いずれにしても水平、もしくは水平よりやや斜め上へという力の方向を意識していたが、地面に張り付くような立禅を続けているうちに、探手での力の方向性が変わってきた。打拳でも、差し手でも、発力でも「水平に移動して、当たる直後に垂直に落ちる」そんな感覚が出てきていた。

「圧縮から引き落とす組手」をイメージして、11月28日(日)の稽古に臨んだ。続きは「冬の章」にて・・・。お楽しみに~