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会員・会友員のテクスト 富川リュウの太気拳修行記

平成21年・春の章

ちょっとちょっとの体の変化

これまでの間、身体の変化を色々な場面で感じてきていた。日々ちょっとだけではあるが、ほぼ毎日のように何某かの変化を感じている。これまでの大きなトピックスとしては、平成17年4月8日記述の「アゴを引き、胸を張って股関節がハマッた」というもの、平成19年、新春の章での「出っ腹出っ尻体形」タイトル中での上腹部や下腹部の変化、平成20年の秋の章での「パルス打法」前後に記述したアバラ骨の領域である胸郭に関しての変化、などなど。総じて見ると、肩と首、腰と腹、背中とお腹、胸、肩甲骨、それらの状態やそれぞれの兼ね合いで出来上がる立ち姿(姿勢)に変化が現れ、その都度、喜んだり、悲しんだり、感動したり、という記載がある。

当然のことながら、それがあったから楽しい立禅であり、それがあったからこそ太気拳を続けられてきたのだが、ここへ来て、今までの変化が、ちょっとちょっとでしかなかったな…と思えるほどの大きな変化・大きな進化が自分の身に起きた。

日常が変わる・性格が変わる

天野先生は「日常が変わる稽古でなければ意味がない」という。これは、太気拳の稽古で武術としての組手を進化させようとするならば、当然、自らの日常生活にも変化が現れ、自分との向き合い方や他人との向き合い方、ひいては仕事との向き合い方などにも、修正や見直しがあってしかるべき、という意味だと理解している。実際に自分でも、この富川リュウの修業記にたびたび書いているような日常生活の変化や仕事への取り組み方の変化を体験してきている。しかし、もしかしたら太気拳とは、人の性質・気質までをも改善し、性格や人格にも、変化をもたらすのではないかと感じている。

春の新ネタ、BLINKINGと体の記憶

今年3月、4月は長期の出張などで仕事が忙しく、あまり稽古に参加できなかった。3月度は三回、4月度は一回のみである。第十部の新春の章に記述した内容は、3月8日の岸根での稽古で終了している。その後の春の新ネタとしては、BLINKING(3/15)と体の記憶(4/12)が挙げられる。BLINKINGとは、I先輩からのアドバイス。意識の解像度を上げ、這いなどで動いていく時にも、自分の身体の光が点滅しているように少しずつ動いていくというもの。体の記憶とは、天野先生のエッセイからのヒントで、組手で一人稽古のときのパフォーマンスを出すためには、気分を使って記憶をインプットし、気分を使ってそれを引き出すというもの。どちらもそこそこの成果を挙げ、どちらも必要な要素ではあると感じたが、自分の組手に大きな進化は見られなかった。

気分が重い

今年に入って、なにか気分が冴えない日々が続いている。1月から4月の上旬くらいまで、ずっとだ。1月から3月、4月にかけて、仕事がどんどん忙しくなってきている。2月の中旬からは、花粉症も出てきている。それでも毎日の朝練では進化を感じていたし、毎週ではないが、土曜日はタンゴで遊んで、日曜日は太気拳の稽古に参加している。仕事や家庭サービスに忙殺されていた訳ではない。1月から3月までの状況は「新春の章」にも書いた。これを読むと、それなりに充実した日々のようにも見受けられよう。しかしながら、ずっと気分が重い日々が続いている。原因は、仕事ではない、家庭でもない、太気拳だ。組手での結果がでないこと、何かがノドに詰まっていて、しっくりこない感じ。もうすぐ、ポンっと出てきそうで、出てこない、そんなじれったさが、重苦しい気分の原因だと思う。

夫婦喧嘩の果てに

4月の上旬、7日間の休暇をいただいた。勤続25年のご褒美休暇だ。妻と二人、沖縄へ旅行に出かけた。休暇明けに長期の出張予定が入っていて、内容的にも重いため、それが気になってなかなか旅行気分を楽しめずにいた。旅行4日目の夜、ホテルの部屋でささいなことから喧嘩になった。結婚して17年、これまでの傾向では3年に一度くらいの頻度で大喧嘩になる。今回は、なにか心の中にわだかまっていたもの、それをお互いに吐き出した。そして妻は妻なりに、自分は自分なりに、自分の中の問題に気付き、解き放った。その時、自分の中から何かがポンっと音を立てて抜けた。

その夜は泡盛で多少酔っ払っていたこともあり、大きな変化には気付かなかったが、翌朝の立禅で違う自分を発見した。旅行中は妻と二人で朝食をとるので、妻が起床する前に30分ほどの自主練をしていた。この日の朝、胸が緩んでいた。腕で囲む範囲がそれまでよりも狭くなり、しかしその分、胸や喉の辺りに柔らかい動きが感じられた。帰りの飛行機の中、何か胸の辺りがムズムズする。鎖骨の下あたり、胸骨の脇のアバラの周りの筋肉を揉み解したくなるようなムズムズ感だ。

この数日後、4/12の岸根での稽古の際に、天野先生からソケイ部が伸びていることと頭が前に落ちていることを指摘された。今までも何度か指摘されている自分のクセになっている姿勢だ。翌朝の出勤前の自主練、天野先生に言われたように、それまでよりも少しだけソケイ部を引く、引き過ぎると出っ尻になってしまうので、この微妙なサジ加減が難しい。中庸な位置を探ると、ちょっと下腹部がヒクヒクするようなポイントが見つかった。その瞬間、自分の頭部がムクムクと持ち上がり、とても高い位置に、そして今までよりもかなり後ろの位置に来た。

大きな大きな体の変化・気持ちの変化

4月13日から3週間ほど、仕事で忙しい日々を過ごしていたが、身体と気持ちに大きな変化を感じていた。はじめ2日ほどは頭が冴えてよく眠れなかった。3日目、開いた胸を閉じてやると良く眠れることに気付いた。はじめ5日間ほど、下痢ではないのだけれども宿便のような便が一日5~6回出続けた。立禅では、胸が緩んでムクムクと持ち上がった頭位置、そして良く動くようになった肩甲骨を感じていた。また、出っ腹出っ尻体形が解消され、ムネとノドがよく開いて呼吸が楽になっていた。天を仰ぎ、ウルトラマンの変身シーンのようなポーズととると、サーカスでよく見る剣を飲み込むパフォーマンスでさえもできそうな感覚がある。

日常では、立ち姿も座る姿勢もオードリーの春日君(ピンクのベスト着用)のような姿勢になっていた。特に驚いたのは、気分の違い。それまでは神経質でビビリィな性格だったのに、この日を境に、あまり細かいことは気にならなくなり、先々のことも「まぁなんとかなるさ」と思えるようになっていた。頭位置が本来の高い位置にきたことで、立ち仕事でもあまり疲れなくなっていた。まあそうはいっても、今までが人並み以下だったので、やっと人並みになれたなぁ、というレベルではあるが。

生まれ変わった自分

思うに、これまでの9年間、太気拳の稽古をとおして、自分の身体と向き合い続けてきた。ちょっとちょっとの進化を感じ日々を過ごしてきたが、ここへきて喉の辺りと鎖骨の下、胸骨の周りにあった精神的なわだかまり、あるいは肉体的なシコリとなっていたトラウマ(精神的外傷)などが抜き取られたことで、胸が緩み、頭位置が修正されるに至ったのだと思う。

気分スッキリ!

5月3日、久しぶりの岸根での組手。期待したほどの成果は出なかったが、前回よりは確実に進化していた。1月の中旬、岸根での稽古のあとに、A先輩とI先輩、そしてK先輩と4人で昼食をとった時に出た話、太気拳やってると、どんどん良くなるよ、稽古も組手もどんどん面白くなるし…。その頃、気分の重い日々を送っていた自分には、にわかには信じがたい話だったが、今ではそれが確信できる。ここに生まれ変わった自分がいる。気分スッキリ!まだまだ天井知らずな進化を確信している。