温故知新
今年の1月からのトピックスは、温故知新なことがいっぱいあったことだ。入門してからの1年目、2年目に習ったことを見返す機会が多かった。組手での成果が出ないトミリュウに、あれやこれやとアドバイスをくれる先輩や色々とメニューを工夫してくださる天野先生からの心遣いが嬉しい毎日だ。
A先輩からは「揺り」を見直すようにとのアドバイスをいただいた。組手での接触の際に、この揺りで培った感覚が役立つとのことだ。また組手では、「打ちに行かずに、触りに行け」というアドバイスもいただいた。相手の腕でも顔でもまず初めに接触した部分を触りに行く、その後反応し、打つなり崩すなり…、というような内容で、難しい要求であるが、トミリュウの組手の成果につながる素晴らしいアドバイスであった。
また天野先生からは、盛り沢山の色々な歩法の指導をいただいた。入門した年、平成12年の夏の章に書いた「ジグザグ歩法と加速歩法」にフィードバックし、尚且つ新しい視点からご指導いただいた。先生によると、歩法は大まかに言って二通りしかなく、それは普通に歩いていく「並み足」と、一旦止まって踏み替える「継ぎ足」だけであるとのこと。この解釈から、前へ横へ、相手の周りを周る、などなどの色々なバリエーションを教えていただいた。これらの歩法練習を体に馴染ませていくことで、自分の組手の成果につながる新しい発見があった。
※「並み足」は便宜上、トミリュウが勝手に付けたネーミングです。
皮膚感覚から体毛感覚へ
代表的な揺りのメニューに「引き寄せる揺り」というのがある。両手のひら下向きにして腕を前方へ伸ばしていき、両手の平を向かい合わせにして腕を引いてくるように動かす。指先は常に前方を指しているようにする。そしてだんだんとハンドの座標位置を変えずに、両手の平を向かい合わせにした時点で、何かを掴んだと想定して体を前に、重心が5:5になる位まで移動させる。そして手のひらを下に向けながら、体を後ろへ戻していく。
(ちなみにこの揺りは、平成14年の春の章・揺りの項目の中の2番に記述されている。記述されているということは、当然、自分でも取り組んでいたはずなのだが…もう7年も前のことだ。そして現在は、下記のように理解している)
この揺りは、その形が出来れば良いというものではなく、細かい体の使い方と言葉にはできない感覚的なものを探す・養う必要性がある。これは当然、入門してすぐの者にはわかるはずもなく、長年、立禅を組んできたものにとっても難題である。なぜなら、言いようが無い、説明のしようが無い、そういう感覚的な世界だからである。
前年度の第九部・冬の章の最終項目は<八種の半禅・八種の構え>ということで終わっている。このことについて、I先輩に対して「これはあなたのフォームを盗んで考えたことなんです」と報告した。I先輩の答えは「それは違うよ」というものだった。彼曰く「確かに頭の位置はそのように見えるだろうし、それ自体が間違いだと言っているのではない。ただ重要なことは、下が動いて(その結果として)頭位置も変わるということ」
また、「下というのは「腰腹」のこと。この辺を練って、ここから動けるようにしていかないと太気の動きにならないよ」ということも言われた。
A先輩からは、「とにかく力を抜いていく、リキまないで揺りを行う。常にニュートラルな状態、フラットな状態を保つ、前にも行けるけど、後ろにも退がれる。上にも行けるけど、下にも行ける、それを意識して揺りに取り組んでみなよ、そしたらさ、組手も変わるよ、と言われた。
I先輩とA先輩のアドバイスに従って1月から2月にかけて、この揺りに取り組んで、皮膚感覚というよりも、体毛感覚という感じの方が力が抜けて、いい感じになるな、と思った。また、ハンドの座標位置を変えずにこの揺りを行うことで、ハラがとても良く動くようになってきて、質的な進化の兆しがあった。上手くして、これが組手の成果につながってくれると良いのだが…、そんな淡い期待に胸が膨らんだ。
SHOES BY SHOES
1月17日・土曜日の元住での組手稽古の最後の方で「相手と膠着して、どうしていいかわからないときに、足位置を替えるだけで、大きく状況の変化を起こせる」という天野先生の説明があった。この時の天野先生の動きの中から見て盗んだものが「SHOES BY SHOES」。トミリュウは、この日からしばらくの間、この自分で編み出した架空の課題に取り組んで、無駄な時間を過ごすこととなる。
自分はコロンブス張りの大発見をしたつもりで、この課題に取り組んでいた。「SHOES BY SHOES」とは、相手の靴の脇に自分の靴を添えて様に置くようにすること。この位置関係が奥義なのではないかと、色々と考え、工夫した。その位置・タイミング、それを見つければ、後だしジャンケンのように、組手では常勝、負け知らず―――となることを夢見て。
2月8日・日曜日の岸根での稽古。この日の組手は、SHOES BY SHOESにこだわりすぎて「相手が、こうきたらこうしよう」をしていた。「こうきたら・こうしよう」は、組手では一番やってはいけないことだ、と天野先生に口を酸っぱくして言われていたのにもかかわらず、その一番やってはいけないことをやってしまった。
前腕のタテ
1月24日・土曜日の元住での組手稽古の際に、足の踏み替えを伴った打拳のディフェンス技術を教わった。これは、片方の前腕の外側と手の甲を相手に向け「前腕の盾」という感じのもので、とても太気拳らしい独特な動きである。トミリュウは、2月8日の悲惨な組手の後から、この前腕の盾に固執して無駄な時間を過ごすこととなる。
前腕の盾の練りを繰り返しながら、相手の打拳や蹴りをスキーのスラロームのようにすり抜けながら、最終的に相手の腹部から頸動脈に向けて、逆方向の袈裟切りのように入り込めば、組手では常勝、負け知らず―――となることを夢見て。
2月15日・日曜日の岸根での稽古。この日の組手は、前腕の盾にこだわりすぎて「相手が、こうきたらこうしよう」をしていた。「こうきたら・こうしよう」は、組手では一番やってはいけないことだ、と天野先生に口を酸っぱくして言われていたのにもかかわらず、その一番やってはいけないことをやってしまった。なにか組手必勝のルーティンのようなアプローチがあるのだろうか。誰も教えてくれないのなら、自分で探すしかない。
手応えのなさ
しかしながら前腕の盾に取り組む中で、この力のみなぎる動きでさえも工夫次第で力を抜いて行えることを発見した。肘を外に張り、二の腕が空気に乗っかるような感覚を見つけると、結構、力が抜けてきた。ここのところのテーマは「手応えのなさ」手応えとを手放したときに、新しい発見が出てくる。
究極のハイレグ
また、前腕の盾で脱力して揺りの動きを繰り返すうちに、腹部から胸部にかけて大きな変化があった。これは胸板が縦に3枚に割れたような感覚で、股間のソケイ部の切り込み角度が大きくなり、脇までがソケイ部のような感覚だ。この感覚は究極のハイレグといえるのだが、不思議なことにこの線は、上開きのハイレグ・バージョンだけでなく、下がハの字にひらいた二本線、縦に平行な二本線、胸に大きくバッテンとなるクロス線などなど、その時々で感覚が変わっていった。
センターステップ
2月8日から2月21日にかけて色々な歩法を教わった。反復横跳びのようなもの、スキップでランラン気分のもの、横へ斜めに進んで行くもの、相手の周りを廻っていくようなもの等々。これらの中から自分なりにピックアップしたものがセンターステップだ。これは並足で相手に向かって歩いていき、急激に方向を替えるために、継ぎ足を相手のセンターに置くというものだ。トミリュウは、2月15日の悲惨な組手の後から、このセンターステップに固執して無駄な時間を過ごすこととなる。センターステップからの急激な体の転換で、相手の斜め・あるいは横位置を瞬時に取れるのならば、組手では常勝、負け知らず―――となることを夢見て。
3月8日・日曜日の岸根での稽古。この日の組手は、センターステップにこだわりすぎて「相手が、こうきたらこうしよう」をしていた。「こうきたら・こうしよう」は、組手では一番やってはいけないことだ、と天野先生に口を酸っぱくして言われていたのにもかかわらず、その一番やってはいけないことをやってしまった。なにか組手必勝のルーティンのようなアプローチがあるのだろうか。もうそれを探すのは止めにしよう…と思った。