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メールQ&A 天野敏のテクスト

伝統空手と太氣拳

Q:
天野先生
太気拳のホームページを拝見致しました。

私は以前より健康と護身のため武術に関心がありますが経験はありません。
若者が強い格闘技は年老いてから護身もできず健康でもないと感じて調べた結果、先生の太気拳と日本の伝統空手に至りました。
そこで先生に質問があります。

1. 先生は日本の伝統空手のご経験後なぜそれを続けず中国武術である太気拳に転向されたのですか。
個人的には、もし中国武術も伝統空手も健康と護身に有効であれば日本発祥のものがより日本人に合っている気がします。太気拳または中国武術の長所をお教え下さい。

2. 先生の本「太気拳の扉」は読んですぐ立禅などを試せるように書かれておりますか。
書籍は現在私が住んでいる海外からも購入可能なので、もしそうであればすぐ取り寄せて試してみたいと思います。

A:
武術や格闘技の経験が無いとの事ですが、かえってとても素直な質問だな、と思いました。

まず、何故僕が太気拳を始めたのか、ですが、これはとても単純です。
それは沢井先生に私の知っている世界と異質の世界を感じたからです。

僕が空手を始めたのは28歳、理由はもちろん強くなりたかったからです。
みんなより少しでも強くなりたかったから、結構一生懸命練習しました。
そして、大会でもある程度に成績を上げられるようになりました。
しかし、その時に思いました。
強さを評価するのに、大会での成績しかないのはおかしくは無いだろうか、と。
別の言い方をするなら、良い成績を上げても、強くなったとは全然感じられなかったのです。
打ち方や蹴り方を覚えて、それを使って組手で相手を倒した。
ただそれだけ、と言う感じでした。
自分が何にも変わっていないのは自分が一番知っていました。
かといって、実際の組手をやらない武術には興味はまるでもてません。
その時に出会ったのが沢井先生であり、太気拳だったわけです。
沢井先生と太気拳に新しい、そして自分の知らない世界があることを教えてもらったわけです。
以上が僕が太気拳を始めたきっかけです。

それから質問の中に、中国武術や伝統空手が健康と護身に有効、とありましたが、これは一概にYESとは言えません。
有効なものもあれば、そうでないものも一杯あると思います。
僕もあまり知りませんが、色々な武術があります。
それを一括りには出来ませんから。

そして、太気拳の長所と言うことですが、これはまあ、言ってみれば自然と言うことでしょう。
当たり前のことを当たり前にできるようにしていこうと言うのが太気拳だと思います。

それから、「太気拳の扉」についてですが、読んですぐ出来るように、とは考えて書いたつもりです。
しかし、言葉はあくまで言葉ですから、正しく伝わる事もあれば、読んで勘違いすることもあるかもしれません。
本を書いておいて、こんな事を言うのも変ですが、武術は言葉では伝わりません。
伝わるのは、身体で感じて初めて伝わるのだと思います。
だから、「太気拳の扉」を読むだけでなく、実際に禅を組んだりして身体で感じてみてください。
その上でないと、言葉を吟味する事も出来ないと思いますから。

太気会 天野