Q:
はじめてメールさせて頂きます。
私は腹部の手術を受けた後、医者に腹筋を鍛えるようにいわれたのですが、内家拳では筋肉をつけてはいけないのは本当なのですか?
腹圧が下がってしまい 特に這いが大変辛いです。
太気拳を続けていきたいので天野老師のアドバイスをよろしくお願いします。
A:
お腹にメスを入れたとの事。
とても大変でしたね。
さて文中に
>内家拳では筋肉をつけてはいけないのでは・・・
とありますが、正直そんな話は聞いた事がありません。
なんと言っても人は骨格を筋肉・腱等を利用して動かす事で活動します。
だから同じ動きなら筋繊維や腱が強靭な方が良いに決まっています。
太気拳でもそうですが、稽古は結構きついものです(勿論、楽にやろうとすれば幾らでも出来ますが)。
身体が虚弱な人間は別にして、普通であれば稽古の中で必要な筋肉などをつけていくものです。
また、それが一番合理的で調和の取れる身体の育て方だとおもます。
ただ、もともと虚弱であればある程度の筋肉トレーニングは必要かもしれません。
また、質問にあるように手術の後などで、明確に筋肉が落ちているのであれば、ある程度の筋肉トレーニングは当然必要だと思います。
特に腹筋が落ちるという事は、腹筋だけでなく当然背筋等の体幹部を保持する力が落ちているわけですし、当然肺活量など基本的なものが落ちている可能性もあります。
太気拳では腹・腰の安定した力はとても重要です。
と言う事で、ある程度の筋肉トレーニングは必要だと思います。
ここからは蛇足ですが、質問にあった「筋肉をつけてはいけない」というような誤解は何処から来るのでしょう。
多分それは、練習のときに「身体を緩める事が大事だ」という事を素人考えで考え違いしているのだと思います。
身体をなぜ緩めるのか?・・・それは必要とされる一瞬に(打つであれ逃げるであれ)、身体全体を調和のうちに爆発的に緊張させるためです。
緩んでいるからこそ一瞬の緊張が引き出せるのです。
つまり爆発的な緊張の為にこそ緩めるのです。
緩んでいる状態から瞬間的なテンションの転換、それが変化であり、速度であり。力です。
爆発的な緊張とは、神経・筋肉を含めたものです。
当然その時には筋繊維が強いほうがいいのは言うまでもありません。
ただ、一般的に考えられるように、腕や胸・肩などを鍛えても特に爆発力が上がる、と言うものではありません。
重いものを持ち上げるのなら、これで良いのですが武術の力とはそう言うものではないからです。
これは一度体験してみればすぐ判ります。
という事であまり筋肉トレーニングは勧めないのです。
また多くの場合筋肉トレーニングは、身体全体の調和とは逆の方向を向き、部分を専門的に鍛えると言う事が多いからです。
ちょっと蛇足が長くなりましたが(だから蛇足ですけど)、そういう訳ですから、素人考えに惑わされず、補助的に身体を鍛えながら太気拳の稽古をがんばってください。
太気会 天野